2011年06月15日

ブラック・スワン(ネタバレあり)

お待たせしました。
ネタバレ版の感想をようやくアップいたします。
ちなみにかなーり長文です。

ナタリー演じるニナは
ニューヨーク・シティ・バレエ団のソリストで
バレエ一筋の優等生。
テクニックに問題はないけれど演技の幅がなく
それを克服するために…という粗筋なのですが
これが全然、主人公の成長物語でもなければ
サクセスストーリーでもない。
しいて言えば…大人向けのブラックジョーク??

設定やキャスティングは絶妙。
ただホラーな演出はやや陳腐に思いました。
いかにも…という不気味な音楽が流れ始めて
必ず何か仕掛けが出てくる、
それもかなり古典的な脅かし方です。

それからとにかく「痛い」表現が多い。
心の準備ができていないと結構シンドイかも。
エロも子供にはキツいのでR15は正解。
というかR18でも良いのでは。

とにかく主人公の妄想と現実の境目がよく分らない話です。
むしろすべてはニナの心象風景なのかもしれません。
たぶん母親もリリーも演出家も
おそらくニナ自身の投影に過ぎない。

稽古場でも劇場でも自宅でもニナは孤独で常に苦しそう。
おそらくは自身の最大の庇護者である母親を最も恐れている。
母の管理下を外れたいと願いながら自立する術を知りません。

母親に反発してリリーとクラブへ遊びに行き、
たまたま出会ったバレエを全く知らない行きずりの男に
ニナは白鳥の湖のストーリーを説明します。
最後に呪いを解くのは愛の力だと。
ニナのこの力説は劇中に何度か繰り返されます。
悲劇なのはニナ本人がおそらく「愛の力」なるものを
頭でしか理解していないことです。
だからこそ黒鳥の踊りに説得力がないのでは?
黒鳥はこの映画の中で
官能やダークサイドの象徴のように扱われていますが
それ以上に人間の本心とか根源的な生命力とか…
そういう意味合いに感じます。

そしてとにかく主人公はうんざりするぐらい性格が受け身。
演出家の目の前で黒鳥のフェッテを失敗したのは
途中でリリーがいきなり入ってきたからと弁解したり。
母親と決定的な大喧嘩した翌朝に寝坊した彼女は
「どうして起こしてくれなかったの」と
小学生のような不満をぶつけます。
本番初日のリフトで意識が飛んで落下した後も
相手役の男性ダンサーが悪いと言い張る…

演出家(ヴァンサン・カッセルが好演)はニナに言います。
「自分を解放しろ」
「障害となっているのは自分自身だ」と。
サディスティックな演出家は、
官能表現の不足するニナに宿題として自☆行為を命じます。
そんなことで黒鳥が踊れるなら誰も苦労しないじゃん…と
唖然としそうな展開ですが、
さらにこれに易々と従うニナの妙な素直さが
多分いちばん問題。

しかしこの物語ではニナの自傷行為と☆慰行為が
ウラオモテで語られる仕掛けのようです。
親の望む良い子、演出家の望む良いダンサーになろうと必死になり
そしてジレンマからニナはしばしば自傷行為に及びます。
☆慰行為では快感も感じるものの、
どうも彼女は他人に与える喜びや分かち合う幸せを知らないらしい。
リリーとの妄想ベッドシーンもひたすら受身のまま。

ラスト、ニナは穏やかな表情で
「私、完璧だったわ」と自分に対してつぶやきます。
う〜ん・・・
私にはこのセリフが
「わたし、最高の☆慰行為をやり遂げたわ」
という意味にしか思えなかったのです。
納得したのはニナだけで
観客が呼んでいるのにカーテンコールにも出られない、
初日を迎えたばかりなのに主役が自傷行為で大怪我って
普通に考えたら大迷惑では…。

客席ではニナの母も(娘の熱演に涙を浮かべて)
熱い拍手を送っていましたよね。
ただ、あの客席の拍手喝采すらもニナの妄想なのかもしれない。
観客一人一人の顔を確認したら全員ニナの顔だったりして…

そしてなぜか劇場が
すごく小さく閉じられた空間にしか見えなかったのです。
大舞台という広がりが感じられない。
これもニナの意識が閉鎖的なことの暗喩?

それにそもそもどうして急に本番で
黒鳥の演技ができるようになったのか
全く描かれておらずその辺りも不明。
CGは面白かったけれど
鳥になっちゃってどうするんだ〜というか。
もっと言えば白鳥との差も
メイクや衣装以外には見えなかった。

なんとも滑稽にして哀れな結末、
でも主人公にしたらハッピーエンドなのかも。
フシギな後味の映画でしたね。
ただダンスシーンを含めたナタリーの熱演は見ごたえがあったし
キャストはそれぞれハマリ役で決して嫌な感じではなかったですよ。
ホラーテイストもどうにか許容範囲でした。
バレエはテーマではなくモチーフとなっているだけで
公演の舞台袖や楽屋などのバックステージの描写も
ところどころ奇妙なのですが
作られたエンタメなのだと割り切れば
2時間近く飽きずに見られて私は楽しめました。

ちなみに主演のナタリー・ポートマン、
無事に男の子を出産したと今日報じられていましたね。おめでとう!!
本当に、この映画が人生の転機になったんだなぁ。
女優としてはこれからがきっと楽しみなヒト。

この映画を観終えた今は…
彼女の出世作「レオン」と
本作のモトネタと言われている
「パーフェクトブルー」を観たくなっております。

長文失礼いたしました。
最後まで読んで下さってありがとう。
posted by masako at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 見てきました。
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