2011年05月10日

「アレクセイと泉」

また間が空いてしまった…気まぐれ更新でスミマセン。
「特集上映 25年目のチェルノブイリ」にて観てまいりました
「アレクセイと泉」の感想も記載しておきますね。
観に行ったのは5月5日、補助席も足りなくなるほどの盛況でした。

物語は淡々と進みます。
チェルノブイリ原発から約180キロ、
ベラルーシ共和国南東部にあるブジシチェ村。
ここはチェルノブイリの事故で土壌が汚染され、
約600人の村人達は避難を余儀なくされたうえ
村自体が地図からも消されてしまったらしい。
しかし56人の村人達はここに残ることを決めた。
その中には当時20歳だった若者アレクセイも居た。

アレクセイは小児麻痺の後遺症のため?身体に軽微な障害がある。
年老いた両親や馬や豚などの家畜達、犬や猫とともに暮らし
村唯一の若者である彼は皆からとても頼りにされている。

村人達の生活はほぼ自給自足。しかも手作業主体。
たとえば村の洗濯場の木枠を直すためには
なんと森に行って木を切り倒すところから始めなければならない。
電気は通っているらしいのだけどガスや水道はなさそうだった。
飲み水は皆バケツを持って泉に汲みに行く。
水を汲める体力がなくなったら、この村では生きていけない。

それでもバスは週に2回やってくるし
移動販売車から塩やアルコールを買うこともできるので
まったく外界から閉ざされているわけではない。
けれども人工的な娯楽や匿名性はなく、
人々は自然に寄り添い信仰心を持って朴訥に生きている。

映像を見る限りは放射性物質の汚染は全く分からず
あまりに淡々と話が進むので
高齢化と過疎化に悩む小さな村の日常を綴った映画かと
まるで錯覚してしまいそうでした。
でも映画の最後にクレジットが出てきて
今まで見てきたさまざまな村の場所での
放射性物質の検出量が示される。
その高さにまた、愕然とするのです…


村の日常は農作業や家畜の世話、毎日の水汲み。
女性達はさらに機織りや糸紡ぎ、保存食作りと大忙し。
寒そうな冬。暗い雪景色。
雪の中でも外で洗濯をする…もちろん手で洗う。
電化製品に頼りっぱなしの我が生活がなんと脆弱に思えることか。
でも女性たちは明るい色を身に付けてお洒落だし
みんな一様にロングスカート姿。
動きやすさからいえばパンツの方が勝ると思うのだけど
ここではその需要は無いようだ。

短い夏休みにはふだん離れて暮らす家族たちが帰郷して賑やかになる。
時には、ささやかなお祭りでのハレの楽しみもある。
宴では男たちは早々にウオッカで出来上がってしまうけれど
女たちはみな華やかな色のネッカチーフでお洒落をして
積極的に歌やダンスに興じている。
楽しくてやがて切ない、そんな華やぎ。

そして何より村人達の心の拠りどころは「泉」にあった。
この泉だけは放射性物質が一切検出されない。
“百年前からの湧水だから”らしいが、
本当にそれが理由なのだろうか。
「何か」が水の中に棲んでいるのではないだろうか…と
映画を見ながら漠然と考えていた。
それが何かは、全然判らなかったが。

土壌も森もきのこや農作物にもすべて汚染が認められるのに
とにかく泉だけは凛として清浄を保ち続けている。
そのせいなのか、事故当時まだ20歳だったアレクセイも
ガンや白血病などに罹患していない様子だった。
画面を見た限りでは動植物にも奇形や異状は見当たらない。
そこまでは描いていないせいかもしれないけれど。

でもアレクセイは結婚して家族を持つ気はないらしい。
老いた両親の傍に居てあげたい気持と
自分の身体に障害があることを気にしてなのか?
しかしこのままでは、村は本当に消滅してしまうだろう…
次世代を担う、子供が一人もいないのだから。

本当に淡々と、物語は進んで終わる。
アレクセイは今40代半ばのはず。
元気に過ごしているのだろうか。
そして村は、どうなっているんだろう?


同じく本橋成一監督の「ナージャの村」とともに
ポレポレでの上映は特集終了後も継続だそうです。
6月3日までの追加上映、リピーター割引もありとのこと。
興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
派手さはないのですがジワジワ余韻の来る作品です。
坂本龍一の音楽も映像に添う感じで静謐でした。
ポレポレ坐1階にあるカフェも落ち着けるのでお薦め。
http://www.mmjp.or.jp/pole2/
posted by masako at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 見てきました。
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